メキシコのスペイン語:ベニステか、ビニステか?
| スペイン語 venir | ||
|---|---|---|
| 現在 | 過去 | |
| 1人称単数 | vengo | vine |
| 2人称単数 | vienes | viniste |
| 3人称単数 | viene | vino |
| 1人称複数 | venimos | vinimos |
| 2人称複数 | venís | vinisteis |
| 3人称複数 | vienen | vinieron |
| ラテン語 venīre | ||
|---|---|---|
| 現在 | 過去 | |
| 1人称単数 | venīō | vēnī |
| 2人称単数 | venīs | vēnistī |
| 3人称単数 | venit | vēnit |
| 1人称複数 | venīmus | vēnimus |
| 2人称複数 | venītis | vēnistis |
| 3人称複数 | veniunt | vēnērunt |
メキシコのスペイン語では、「来る」を意味する動詞venir(ベニール)の直説法点過去2人称単数形は、4種類あります。文法上の正しい活用はviniste(ビニステ)ですが、veniste、vinistes、venistes(ベニステ、ビニステス、ベニステス)も使用されています。
はじめに、vinistesとvenistesについてですが、メキシコの口語のスペイン語では、直説法点過去2人称単数形の活用語尾に、sをつける癖があります。これは、venir以外の動詞においても同様です。一般的に、中程度以上の学歴を持つ人々は、sをつける話し方を避ける傾向があります。誤りだから避けるということではなく、感覚的なことのようです。
スペイン語の活用では、2人称は、ほぼすべての時制においてsで終わります。例えば、「歌う」cantarの2人称現在形はcantas、線過去はcantabasです。しかし、唯一の例外がこの直説法点過去で、活用形はcantasteです。実は、スペイン語の祖語であるラテン語でも、口語(俗ラテン語)では、2人称の過去形の語尾にsをつけて、すべての時制の語尾を統一化する傾向(類推)がありました。しかし、sをつける類推は、現代の教養のあるメキシコ人には受け入れられないようです。
さらに、語尾のsの問題のほかにも、venisteかvinisteか、という問題があります。ラテン語の文語(古典ラテン語)では、2人称単数の過去形の活用はvenistiであり、スペイン語ではさしずめveniste(ベニステ)となるところです。しかし、点過去の他の人称(点過去1人称vine、3人称vinoなど)に近づく類推作用により、スペイン語の成立過程の初期の段階で、venisteがvinisteとなりました。
venirの点過去の各人称に作用した類推を見ると、まず1人称単数では、ラテン語の活用はveniですが、長母音のiは強勢のeを語形変化させるというスペイン語の性質から類推が起こり、vineになりました。1人称複数のラテン語の活用venimusは、スペイン語ではまずviniemosになり、後にvinimosになりました。3人称複数のveneruntは、スペイン語ではvinieronとなりました。残りの3種類の人称の活用は、本来はveniste、veno、venisteisでしたが、vine、vinimos、vinieronからの類推が生じてviniste、vino、vinisteisとなりました。現在は、viではじまる活用形が、正式な活用と定められています。
この正式な活用は、メキシコのスペイン語では、1人称単数、3人称単数、3人称複数でのみ使用されています。すなわち、vine、veniste、vino、venimos、vinieronとなります。2人称複数は、メキシコのスペイン語では使用しません。正式なスペイン語の活用は上の表のとおりです。
(アルガラビア)