トウモロコシvs小麦粉!トルティージャ対決
メキシコには、トウモロコシと小麦粉の二種類のトルティージャがあります。タコスに最適なトウモロコシのトルティージャか。ブリトーにする小麦粉のトルティージャか。その味や栄養を比べてみます。

画像:トウモロコシのトルティージャ(左)と小麦粉のトルティージャ(右)(Tacos al Pastor 2 by Ari Helminen / CC BY 2.0)
タイトルの「トウモロコシvs小麦粉」は、「南部vs北部」とか「北部vs北部以外」と言いかえてもいいかもしれません。というのは、小麦粉のトルティージャ(フラワートルティージャ)は、メキシコ北部(ヌエボ・レオン州、タマウリパス州、チワワ州、ソノーラ州、コアウイラ州、バハ・カリフォルニア州)の文化の象徴だからです。北部以外の地域では、トウモロコシのトルティージャが一般的です。何といっても、「トウモロコシなしにメキシコはない」のです。
トルティージャひとつで、タコスがとてつもなくおいしくなったり、逆に台無しになったりします。メキシコ人としては、タコスに最適なトウモロコシのトルティージャに一票を投じるのが、ほとんど国民の義務だと感じるほどです。それと言うのも、小麦はメソアメリカ原産ではないし、マヤ神話の「ポポル・ヴフ」にも「人はトウモロコシでできている」(小麦ではなくて)と書かれているのですから。とは言っても、北回帰線より北に住むメキシコ人は、小麦粉とラードと塩でできたトルティージャの方がいいと言うでしょう。なぜなら…。はて、なぜでしょう? その理由を、考えてみます。
トウモロコシのトルティージャ

画像:トウモロコシのトルティージャで包むタコス・アル・パストール(Tacos al Pastor 2 by Ari Helminen / CC BY 2.0)
先スペイン時代、メキシコ中部の人々は、トルティージャのことをナワトル語で「トラスカリ」と呼んでいました。何となく聞いたことがある名前だと思いませんか? そう、トラスカラ州の名前に似ているのです。実際、現在のトラスカラ州にあたる地方で、トルティージャは生まれました。現在でも、トラスカラ州のウアマントラ、トラスコ、アピサコでは、メキシコでも最もおいしいトルティージャを食べることができます。その後、植民地時代にやってきたスペイン人たちは、少しばかりイマジネーションに欠けた人たちだったのか、食の傑作である「トラスカリ」を見て、「卵と小麦粉でできたトルタ」だと思い、「トルティージャ」と呼ぶことにしました。それ以来、このトルティージャという単語は、メキシコ人の頭と心に染み込んで、この単語抜きの生活も人生も、考えられないほどになりました。
トウモロコシのトルティージャは、カルシウム、カリウム、タンパク質が豊富で、コレステロールやグルテンを含まず、ナトリウムや脂質もほとんど含まれていません。
小麦粉のトルティージャ

画像:小麦粉のトルティージャで作るブリトー
小麦粉のトルティージャの作り方は、パンの作り方とほとんど同じですが、イーストは使用しません。このトルティージャは、スペイン系ユダヤ人によって、現在のメキシコ北部・米国南部に伝えられたもので、アラブのパン「ピタ」に似ています。トルティージャ・ソバケラと呼ばれる小麦粉の巨大なトルティージャは、食べたことがある人も多いでしょう。このトルティージャは、北部スタイルのおいしいブリトーや、バハ・カリフォルニア風タコスやソノーラ風タコス(エビとキャベツとマヨネーズのタコス)で使われるトルティージャです。小麦粉のトルティージャは、たいてい、トウモロコシのトルティージャよりも大きく、具と共に食べれば、一枚でお腹がいっぱいになります。
トウモロコシと小麦粉。この2種類のトルティージャについて、ちょっと退屈な栄養の違いから風味の違いまで、強気な調査をしてみました。もちろん、タコスを食べながら。
トウモロコシのトルティージャのデータ
風味
柔らかく塩気があります。一口噛むごとに、メキシコの味がします。
栄養
カルシウムが豊富で、カロリーが低く、"グルテン・フリー"です。
耐水性
レモン汁やソースをかけると、破れやすくなります。そのため、多くの場合、タコスのトルティージャは2枚重ねになっています。
チーズとの相性
互いの味を引き立てるため、どちらの風味も失われません。まるで、ベストなビジネス・パートナーのようです。
油での調理
様々な食感が生まれます。トトポ(トルティージャ・チップス)、タコス・ドラードス、フラウタの場合は油で揚げ、エンチラーダスの場合は油で焼きます。
トルティージャの2枚重ね
タコスのトルティージャは、2枚重ねでなければならないと言っても過言ではありません。なぜなら、ソースをかけても破れにくいし、具を二つに分ければ、タコス1個分のお金で2個のタコスができるし、何よりもお腹にたまるからです。
小麦粉のトルティージャのデータ
風味
少しかためですが、出来たてはびっくりするほどおいしいです。出来たてほやほやの小麦粉のトルティージャの香りは、焼きたてのパンのような香りで、なんとも幸せな気分にしてくれます。
栄養
炭水化物が多く、カロリーが高く、グルテンも多く含まれます。
耐水性
ソースをかけても、比較的長い時間破れず、形も崩れません。
チーズとの相性
共に食べるとすばらしいおいしさになります。まるで、熱愛中の恋人同士のように相性抜群です。ほかほかのトルティージャに包まれてチーズがとろけ、とんでもなくおいしくなります。
油での調理
チミチャンガは、油で調理したフライド・ブリトーです。大部分のメキシコ人にはなじみのない料理ですが、北部ではとてもポピュラーな一皿です。
トルティージャの2枚重ね
ありえません。2枚重ねたら、かみ切るのがとても大変でしょうし、おいしさも半減してしまいます。
結論
無理にも結論を出さなければならないのですが、それがとても難しいのです。栄養面だけ見れば、おそらくトウモロコシのトルティージャに軍配が上がるでしょう(カロリーも少ないですし)。ですが、ここで二つのトルティージャのすべてを言い尽くせたわけではありません。メキシコ料理では、どのような一皿と共に食べるかによって、相性のよいトルティージャがかわるからです。
(マンチーズより)