山間の村から全国へ:ラ・ミチョアカーナのパレータ
メキシコを象徴するもののひとつである「パレータ」は、メキシコ全土に冷凍フルーツを発送していたミチョアカンの生産者たちのネットワークから生まれました。誰もが大好きな「ラ・ミチョアカーナ」のパレータの歴史を紹介します。

画像:様々なフルーツや野菜を使ったパレータ
メキシコでは、パレテリア(アイスキャンディーの店)でパレータ(アイスキャンディー)を買うことは、ごく日常的な光景です。パレテリアのショーケースには、レモン、マンゴー、タマリンド、ナッツ、シナモンミルク味など、色とりどりのパレータが並んでいます。
ピンク色のロゴが特徴のラ・ミチョアカーナのパレテリアは、メキシコ全国どこの街角でも見かけるほど有名ですが、その始まりはトクンボ村でした。ミチョアカン州の小さな農村だったトクンボは、20世紀の半ばごろ、パレータによって変貌を遂げました。
トクンボのパレータには独自のレシピがあるわけではなく、ラ・ミチョアカーナという店もチェーン店ではありません。企業ではなく、パレータやアイスクリームやドリンク類を売る小さな家族経営の店が、長い期間受け継がれてきたものです。
トクンボのパレータとは?
トクンボのパレータは、シャーベットまたはアイスクリームのベースにフルーツを入れたアイスキャンディーです。この地域の名産のひとつであるフルーツを、様々な組み合わせでパレータにしたことが始まりでした。
トクンボのパレータ祭りでは、レモン、チリ&マンゴー、チーズ、タマリンド、チャモイ、アボカド、マメイ、ピスタチオなど、3000種類以上の色とりどりのパレータに出会うことができます。

画像:様々なフルーツや野菜を使ったパレータ
トクンボのパレータの一番の魅力は、このパレータが“秘伝のレシピ”によるものではなく、自由な手作りのレシピによるものだということです。独自の決まったレシピがないため、店主が店を出したその土地の食材で、独自のフレーバーのパレータを作ることができます。
トクンボのアイスキャンディーの歴史
トクンボのパレータが有名になる以前から、フルーツ味のアイスキャンディーはありましたが、今では「メキシコのパレータといえばトクンボ」と認知されています。ミチョアカン州のトクンボで昔から行われてきた小規模経営のパレテリアが、住民の移住とともに全国に広まり、トクンボの経済を潤すまでになりました。
パレータの歴史に詳しいマルティン・ゴンサーレス氏によると、アグスティン・アンドラーデという人物がレオン州でパレータづくりを学び、その技術をトクンボに持ち込みました。そして、1941年に最初のトクンボ式のパレテリアをメキシコ市でオープンしました。
また、1943年にはイグナシオ・アルカサルという人物が、トクンボ式のパレータの店をメキシコ市の別の場所にオープンしました。
パレータの作り手がトクンボからメキシコ市へ移住し、自分の店を出し、のちにトクンボの親族や知り合いが同じように店を出すのを助けたことが、トクンボの村の発展につながりました。
1950年代には、すでに数十人のトクンボ出身者がパレータづくりを学び、メキシコ市にパレテリアの店を出していました。
今日では、メキシコ市内に500店舗近くのパレテリア「ラ・ミチョアカーナ」があります。メキシコ市だけでなく、メキシコ全国どの州にも店舗があります。

画像:ティフアナにあるパレテリア「ラ・ミチョアカーナ」(La Michoacana, Zona Norte, Tijuana by IBERZA / CC BY-SA 4.0)
フルーツが入ったアイスキャンディー「パレータ」は、今ではメキシコとミチョアカンの象徴になりました。地元の食材を使ったパレータを安く買えるため、全国的に人気のおやつになり、メキシコ料理の一角を占めるようになりました。
ラ・ミチョアカーナは企業のチェーン店か?
「ラ・ミチョアカーナ」という店名で知られるこれらのパレテリアは、ひとつの企業の系列店ではなく、フランチャイズでもありません。
前出のゴンサーレス氏はこの形態を「友人関係、出身地、血縁関係で結ばれた家族経営のゆるいネットワーク」と表現しています。各店の店主が自分の店を管理することができ、その土地の人の好みに合わせたフレーバーを作って売ることができます。そのため、町中にたくさんのパレテリアがあり、それがすべてラ・ミチョアカーナのロゴがついた店で、でもパレータのフレーバーは店ごとに異なる、ということになります。
パレータ祭り ~伝統を受け継ぐために

画像:トクンボの村のアイスクリームのモニュメント(Monumento Tocumbo by / CC BY-SA 4.0)
トクンボの村にとって、パレータのビジネスはとても重要なものなので、毎年パレータ祭りが行われます。始まったのは1987年で、全国に店を出す何百人もの店主たちが出身地トクンボに戻ってきて、旧交をあたためたり新しい知り合いを作ったりしています。
12月に行われるこのイベントでは、膨大な数のパレータやアイスが販売され、トクンボの経済の象徴のようになっています。
パレータを語るとき、フルーツや砂糖も大切ですが、何より店を出すためにトクンボからメキシコ市へ移住した家族のことや、パレータで一家を養うことができると証明した人々の歴史を、忘れずにいたいものです。
(アニマルグルメ)