アステカのおはらい「リンピア」


リンピアを行う祈祷師
画像:リンピアを行う祈祷師

 都会のざわめきとアステカの伝統が混在するメキシコ市。その中心部のソカロは、スピリチュアルの浄化やおはらいのメッカとなっていて、夜明けとともに呪術師や祈祷師が現れ、アステカ伝統のおはらいをしてくれます。このソカロのおはらいは、「リンピア」(浄化、きれいにすることを意味する)と呼ばれています。

リンピアの起源

 リンピアの起源は、アステカのメシカ人の時代までさかのぼります。メシカ人は、魂を浄化し、悪い“気”を払い、神々と対話するために、コパル(若い琥珀の樹脂香)を焚いて浄化の儀式を行っていました。ナワトル語でイスタクテテ(白い神々の意味)と呼ばれるコパルは、樹々の血液であるとされ、この世とあの世をつなぐ聖なるものであると考えられていました。

 スペイン人によるメキシコ征服後、このアステカの儀式はカトリックの儀式と混ざり合い、独自のスタイルが確立されました。スペイン植民地時代に持ち込まれたヘンルーダやローズマリーなどのハーブが使われるようになり、儀式に新たな意味づけがなされていきました。例えば、ヘンルーダは羨望や呪いから身を守り、ローズマリーは魂の浄化に役立つと考えられるようになりました。

コパルの香りが立ち込める中でお祓いをする
画像:コパルの香りが立ち込める中でお祓いをする(Limpia Azteca Mexico by Mcknightspear / CC BY-SA 4.0)

アステカの伝統を伝えるリンピア

 ソカロのリンピアは、アステカの文化を今に伝える生きた証です。祈祷師たちは、何世代も世襲で知識を継承し、先祖伝来の浄化の儀式と現代的な要素をミックスしたおはらいを行います。祈祷師たちはまず、おはらいを受ける人の“気”を見ます。それから、その人の周りをぐるぐる回りながら、香りのよいハーブの束で体を払います。その後、コパルの香りが立ち込める中、スペイン語かナワトル語で祈りの言葉を唱えます。

 コパルやハーブのほかに、もうひとつ重要な道具があります。それは、悪い“気”を吸い取るための生卵です。邪気を吸い取った卵を水の入ったコップに割り入れ、その形から魂の状態を占います。

 多くの人にとって、リンピアは単なるおはらいではなく、自分の内面と再びつながる行為を意味しています。例えば、リンピアを受けに来た若い会社員のマリアさんは、「都会のストレスに疲れたら、ここに来ます。魂をリセットし、自分を取り戻せる気がするからです」と語りました。また、ソカロで30年以上祈祷師をやっているルイスさんは、リンピアが地域の役に立っていると考えています。「リンピアは人を浄化するだけではない。このメキシコ市の魂をも浄化するのです」

 めまぐるしく発展していく世界の中で、ソカロのリンピアは、聖なるものと日常が絡み合う伝統的な世界観を保ち続けています。そして、都会の混沌の中心で、伝統と癒しと信仰があることを、いつも私たちに思い出させてくれるものなのです。

(メヒコデスコノシードより)

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