トウガラシは乾燥させると名前が変わる!

画像:市場の乾燥トウガラシ売り場
メキシコでは、同じ品種のトウガラシでも、生か乾燥かで名前が変わります。名前を変えてたくさん売るためとか、どこかの田舎だけで名前が変わるとか、そういうことではありません。トウガラシを乾燥させると、その性質や特徴が大きく変わるため、別の呼び名で呼ぶようになったのです。
生のトウガラシは80~90%の水分を含んでいます。水分活性が高く、青々とした植物やハーブのような風味と、しゃきっとした食感や肉厚な食感があります。しかし、完熟したトウガラシを乾燥させると、色、食感、味が変化します。

画像:生のトウガラシ
乾燥させることは、単に水分を抜くことではありません。水分が抜けて水分活性が低くなると、保存性が増して長期保存できるようになります。さらに、水分が抜けた分、糖質やフェノール化合物、カロテノイドなどの天然色素が濃縮されます。そのため、例えばチレ・アンチョ(乾燥させたチレ・ポブラーノ)には、生のポブラーノにはない甘み、深み、ほんのりとした果実感があります。
乾燥させると、トウガラシの色の元になっている成分にも変化が起こります。カプサンチンやカプソルビンなどの成分は凝縮されて濃さを増し、チレ・グアヒージョやアンチョ、パシージャのような黒っぽい赤や明るい赤になります。チレ・チポトレ(乾燥させたハラペーニョ)の場合は、燻製のプロセスを経ることで揮発性フェノール化合物が生成され、元のハラペーニョとは全く異なる強い香りを持つようになります。
このように、乾燥後の味や香りの変化がとても大きいため、生のトウガラシと乾燥トウガラシは昔から別の食材と考えられ、ハラペーニョ→チポトレ、ポブラーノ→アンチョ(またはムラート)、ミラソル→グアヒージョ、チラカ→パシージャのように、呼び名を変えるようになりました。
食品加工の観点から見ても、トウガラシを乾燥させると、ペースト状に加工したり、粉末にして他の品種のトウガラシと混ぜたり、様々な製品を作ることが容易になります。また、味や香り、辛さが変化した乾燥トウガラシを生のトウガラシのかわりに使うことで、まったく異なる新しい製品を作り出すことができるようになります。
メキシコ人は、世界で最初にトウガラシの栽培を始めました。そして、何世紀にもわたる栽培、売買、保存の繰り返しの中で、生と乾燥のトウガラシを区別するようになりました。食品の保存の必要性から生まれた乾燥というプロセスが、結果として豊かな食文化を生み出すことにつながりました。

画像:生と乾燥で名前が異なるトウガラシの一例
(フルデストより)